「最近、少々値が張っても、美味しいものを少し食べる方がいいと思うようになった。これも老い?」 先日お盆で実家に帰省した時に、うつぼのたたきを辛口の日本酒で流しながら妹が呟いていた。私より5歳も年下の妹が。 その隣で義弟が、ゆっくりと首を縦に2~3度振っていた。妹より更に9歳年下の義弟が。 一串50円のバサ(牛の肺)と大瓶で心身を浄化することにこの上ない極上の快楽を未だに感じている私は自分の舌と胃袋が途端に不憫に思えてきて、慰めを求めるべく隣で高校野球を観ていた主人に視線を送ると、私の心の悲痛な喚声が聞こえたのか、テレビの画面を見据えるその目は間違いなく「御意」と語っていた。 その次の瞬間、神戸国際大付が逆転の3ランホームランを西宮の空に打ち放った。刹那の静寂の後、爆発的な歓声が響き渡った。それは間違いなく45,000人の観客全員が一斉に「御意」と叫んだからだった。 |
- 随筆(神戸由無し物語)
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