不埒なディンクス女の吐き出すくだらない言葉(パソコン閲覧限定)

罵詈雑言-本能ノ趣クママニ

 「まもなく神戸三宮です。右側の扉が開きます。お降りの際、車内にお忘れ物の無いようご注意下さい。」

 ああ、そうか。いつもはドアツードアの間、ノイズキャンセリング機能付きイヤホンを両耳の穴に捻じ込んでいるもんだから馴染みの薄いこのフレーズを聞いて、自分が社会で働いている人間だったと改めて感じた。それと同時に、ふと頭をよぎるものがあった。

 大学卒業後に入社した試薬・臨床検査薬の会社は大阪の道修町にあって、一人暮らしをしていた私は、地下鉄谷町線の都島から梅田経由で御堂筋線の淀屋橋まで通勤していた。しかし、出社初日から電車内で尻を弄られるという典型的な「満員電車あるある」に遭遇。逃げる、弄られる、逃げる、弄られるという不毛な戦を続けていたが、試用期間も終わる頃になってもその対決は終結しなかった。我慢も限界に達し、いよいよ業を煮やしたので、通勤ルートの変更を頼もうと総務部へ足を運んだ。その部署で幅を利かしている行かず後家にえんどう豆のような目でスーツの丈を一瞥されながらも一応了承され、天神橋筋六丁目で乗り継いでの堺筋線の北浜ルートに変更してもらった。不快な通勤時間から解放されて気分が一変したからか、この「まもなく~」という車内アナウンスも耳に気持ち良く流れて入ってきた。

 そんな、どこにでもある思い出すに値しない記憶が急に蘇ってきたのだ。

 「まもなく神戸三宮です。右側の扉が開きます。お降りの際、車内にお忘れ物の無いようご注意下さい。」

 慣性の法則をゆっくりと体で感じて電車は止まった。空気が抜けるような音をさせながらドアが開き、襟足から汗を流すサラリーマンやスマホを睨みながら足を運ぶOLらが、それぞれ早さは違えど重い足取りで電車を降りていく。車内アナウンスと入れ替わるように、今度はホームに流れるアナウンスが聞こえてきた。

 「おはようございます。神戸三宮駅です。」

 おはようございます。か。何となくキャリアウーマンな気分になって、少しだけ背筋が伸びた。
 音楽のない通勤も悪くない。良くも悪くも、忘れていた懐旧の念に誘い出してくれたし、何よりも今まで知らなかった三宮の朝を教えてもらえたわけだから。
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  1. 随筆(神戸由無し物語)
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けいこ

Author:けいこ

幸福とは
幸福を探すことである

【補足】

●日記は「本館」で綴っています。基本、非常に駄文です。(最終更新:2016/12/21

●コメントを下さった方へは、一部を除いて現在「私信③(一行レス)」でお返事させて頂いてますが、根っからの無精者なのでめちゃくちゃ遅いです。(最終更新:2017/09/07

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